豊島美術館の本館内部は、完全写真撮影禁止の厳格なルールが敷かれています。スマートフォンやカメラのシャッター音、液晶の光を一切排除することで、鑑賞者は視覚・聴覚・触覚のすべてを研ぎ澄ませて空間と向き合うことができます。土足厳禁となっており、エントランスで靴を脱ぎ、裸足や靴下でひんやりとした床の感触を確かめながら歩みを進めます。
旅の計画時に天候が崩れると落ち込みがちですが、豊島美術館に関して言えば「雨の日」こそが最も贅沢な鑑賞日と評されます。
屋根にガラスのない巨大な開口部からは、瀬戸内の雨がそのまま空間内部へと降り注ぎます。床に落ちた雨粒が弾け、無数の水滴と一体になって床を疾走する光景は、晴天時には見られない圧巻のダイナミズムです。雨音がシェル構造の内部で心地よく反響し、天然のホワイトノイズとなって身体を包み込む体験は、多くのリピーターが「雨の日を狙って再訪したい」と口を揃える理由となっています。