蝉の成虫の寿命はおよそ7日間と言われています。7日目に仲間がすべて死に絶え、生き残ってしまった「八日目の蝉」は、果たして不幸なのでしょうか。この問いかけこそが、作品全体を貫く最大のテーマです。
作中では、八日目の蝉について対照的な解釈が提示されます。ひとつは「仲間を失い、見たくもない孤独に直面する悲劇の存在」。世間一般の正しレールから外れ、犯罪者となった希和子、そして誘拐された過去に縛られて生きる恵理菜の姿そのものです。
しかし、物語の結末に向かうにつれて、もうひとつの意味が浮かび上がります。それは、「他の蝉が見ることのできなかった、八日目だけの特別な美しい世界を見られる存在」という肯定的な解釈です。血の繋がりがなくとも、罪悪の果てにあったとしても、希和子と薫が共有した3年半の光に満ちた記憶は消えません。恵理菜は小豆島で自らのルーツを辿り直すことで、「私は誰からも愛されていなかったわけではない」という真実に到達し、八日目を生き抜く覚悟を決めるのです。