映画史において、観客の記憶に意図的な問いを残す構造といえば、鬼才クリストファー・ノーラン監督の手掛けた傑作『インセプション』が筆頭に挙がる。主演のレオナルド・ディカプリオが見せた圧倒的な演技と、他人の夢に潜入して潜在意識にアイデアを植え付けるという重層的な世界観は、世界中の観客を魅了した。
同作を配給したワーナー・ブラザースは、緻密な計算に基づいた極上のサスペンスを展開し、観る者の脳裏に消えない痕跡を刻み込んだ。一方で、日本国内で新海誠監督の『君の名は。』が大ヒットを記録した際、東宝が魅せた「記憶と名前」を巡る切ない叙事詩も記憶に新しい。名作と呼ばれる作品ほど、私たちの記憶のメカニズムそのものをテーマにして観客を引き込む魅力を持っている。