引退の引き金となったのが、アルフレド・ゴンザレス戦以降に顕著となったパンチドランカー疑惑です。「真っ直ぐな線が引けない」「ボタンの掛け違い」「空間認識のズレ」といった初期症状が描かれ、読者にも大きな衝撃を与えました。
しかし、引退後に受けた専門医による精密検査では、器質的な脳の破壊は確認されず「身体に異常は見られない」という診断結果が出ています。一歩を蝕んでいたのは、激闘の連続による深刻なダメージの蓄積と、身体のバランス感覚の狂いによる一時的な機能不全だった可能性が極めて高い状況です。
二人三脚で世界を目指してきた鴨川源二会長は、一歩の異変を誰よりも早く察知していました。自身のボクシング哲学を叩き込み、息子のように愛する一歩の将来を奪うわけにはいかないという鴨川会長の苦渋の親心こそが、一歩の引退を後押しした最大の要因でした。