フライデー事件から8年後の1994年8月、ビートたけしを再び生死の境をさまよう大事件が襲います。東京都新宿区安比奈町付近で発生した原付バイク転倒事故です。頭蓋骨陥没骨折や右顔面麻痺を伴う重傷を負い、一時は再起不能とまで囁かれました。
フライデー襲撃事件での社会的制裁と、このバイク事故による臨死体験は、映画監督「北野武」の表現領域を決定的に深化させました。事故後に発表された映画『キッズ・リターン』(1996年)や、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得した『HANA-BI』(1997年)には、死生観や暴力の本質、そして社会のはみ出し者に対する冷徹かつ優しい眼差しが色濃く反映されています。
逮捕と生死を彷徨う事故という2大事件を経験したことで、北野武の経歴は単なるお笑い芸人の枠を完全に超越しました。破滅と再生を繰り返しながら芸術へと昇華させる独自の生き様は、世界中の映画人や批評家を驚嘆させることになります。