現実世界に目を向けると、ここ数年で脳科学の進歩は目覚ましい発展を遂げた。特に「記憶再凝固(Re-consolidation)」の分子メカニズム解明が進んだことで、PTSD(心因性外傷後ストレス障害)治療の現場では、トラウマ記憶を呼び起こした直後に薬理的アプローチで記憶の強度を弱める技術が実用化段階に入っている。
「特定の記憶だけをピンポイントで弱体化・上書きする」という現代の臨床アプローチ。研究者たちが目指すのは苦痛の緩和だが、一歩間違えれば、まさに頭の中のフィルムを切り取る行為そのものだ。作者の尾田栄一郎氏が描いた想像力は、期せずして半歩先の科学的未来を予言していたと言える。