第一部のクライマックスである、支店長室での対決シーン。圧倒的な証拠を突きつけられた浅野が、半沢の前で床に頭を擦り付け、涙を流しながら許しを乞う「土下座」の場面は、日本のドラマ史に残るカタルシスをもたらした。だが、この土下座に至るまでには緻密なロジックが組み上げられていた。
半沢の目的は単に上司を社会的に抹殺することではなかった。浅野を告発して刑務所へ送り込めば、奪われた5億円の回収や自身の処分撤回が曖昧になるリスクがあった。半沢は浅野の弱みと家族への情、そして人事部への影響力を利用し、刑事告訴の見返りとして「自身と部下たちの希望部署への人事異動」を勝ち取ったのだ。感情的な復讐劇ではなく、冷徹な取引としての決着。この計算し尽くされた着地点こそが、視聴者を唸らせた最大の仕掛けである。