異変の契機は、今年初頭に動画共有プラットフォーム上へ投稿された一作のショートアニメーションだった。ロンドンを拠点とする若手映像クリエイターが、日本の伝統的な和楽器とインディペンデントなハイパーポップを融合させたトラックに乗せ、夜の山中で鬼と踊り明かす老人の姿をスタイリッシュに描いたのだ。これが爆発的な世界的大流行を引き起こした。
「ダンスに興じるお爺さんの身のこなしには、言葉を一切必要としない『解放感』がある」。そう語るのは、ロサンゼルス在住の文化批評家ライアン・カーター氏だ。「完璧なパフォーマンスを目指すのではなく、ただ音に身を委ねる喜び。タイムラインに流れる他人の生活と自分を比べ続けて疲れた現代人にとって、あの無欲な踊りは一種の救いのように映ったのだろう」。ハッシュタグは数億回以上再生され、若者たちが独自の「鬼ダンス」を模倣する現象が世界中で観察されている。