八面六臂の活躍を続けていた野坂でしたが、2003年に自宅で脳梗塞を発症して倒れます。一時は言語障害や半身麻痺に見舞われ、表現者として最大の危機に直面しました。
その過酷な闘病生活を献身的に支えたのが、元宝塚歌劇団の娘役でありシャンソン歌手でもあった妻・野坂暘子です。暘子は夫のリハビリを徹底的にサポートしながら、日々の介護の様子や夫婦の葛藤をエッセイとして発表し、多くの介護家族に勇気を与えました。
不屈のリハビリを重ねた野坂は、左手でペンを握り、口述筆記を交えながら執筆活動を再開。病を得てもなお、世の不条理に対する鋭い筆鋒が鈍ることはありませんでした。
その後、長きにわたる自宅療養を続けていましたが、2015年12月9日、東京都港区の自宅で意識を失っているところを発見され、搬送先の病院で息を引き取りました。死因は心不全。享年85。激動の時代を全身全霊で駆け抜けた波乱万丈の生涯に幕が下ろされた瞬間でした。