2019年の4月下旬、月川温泉郷の「花桃の里」はまさに最高潮を迎えていた。当時の気象観測記録によると、4月初旬の冷え込みによって開花が一時的にブレーキをかけられたものの、中旬以降の急激な気温上昇がドラマチックな一斉開花を引き起こした。赤・白・ピンクの3色が1本の木から咲き分ける「三色花桃」の美しさは、当時のSNSやテレビニュースでも大きく取り上げられ、阿智村への観光客動員数は過去最高水準を記録した。
現地で長年花桃の手入れを続けている地元の保存会メンバーは、「あの年は寒暖差のバランスが絶妙で、花の色づきが極めて濃かった」と振り返る。花弁の落ちにくさや発色の鮮やかさにおいて、2019年はまさに「奇跡の当たり年」だったと言えるだろう。