依頼者が皿の前に座り、箸を持った。スタジオも、視聴者も息をのんだ。
依頼者が食べると「匂いがそのまま」「そのまま、5年も置いてた気がしないくらい」と言って涙を流した。竹山さん、シェフ、依頼者のお父さんも泣いた。
たった一口。それだけで5年分の時間が溶けた。言葉にすると陳腐になってしまうが、実際の映像はそれ以上の重さを持っていた。その結末に、局長も見習い秘書も感涙した。スタジオ全体が、静かに揺れていた。
依頼者は帰宅した父親と一緒に涙を流しながら、母親が作った角煮を食べた。5年越しに向かい合った家族の食卓。テレビカメラの前だとか、番組の演出だとか、そういう余計なことは何も関係なかった。ただ、母親の味があった。それだけだった。