大学卒業後、金子祐大は一度、公立中学校の体育教師という安定したキャリアを選択した。教育現場で生徒たちと向き合い、身体を動かす喜びを伝える日々。しかし、彼の胸の奥底で燃え盛り続けるスキーへの熱量が冷めることはなかった。
「自分は本当にこの場所で満足しているのか。自分の限界を雪上で試さなくてよいのか」
強い自問自答の末、彼は周囲を驚かせる決断を下す。教職を辞し、全エネルギーを基礎スキーの世界へと注ぎ込む道を選んだのだ。公務員という安泰の地位を手放すリスクは大きかった。しかし、その退路を断った覚悟が、彼の滑りに異次元の凄みと執念をもたらすこととなる。