「画面の中の数字は一瞬で消えるが、大胸筋は消えない」。都内のITスタートアップに勤務する男性(28)は、バーベルを握りしめながらそう語る。彼の仕事は、AIエージェントの挙動を監視し、調整することだ。実体のないコードと向き合う日々に、いつしか精神的な限界を感じていたという。彼のような20代から30代のビジネスパーソンが、今こぞってフリーウェイトエリアに押し寄せている。
これは一種の「フィジカル・カウンター(肉体による逆襲)」だ。スマートフォンの画面をスクロールし続け、アルゴリズムに最適化されたコンテンツを消費するだけの毎日に、私たちの脳は悲鳴を上げている。触覚や痛覚、そして筋肉のきしむ感覚。これら生身のフィードバックこそが、バーチャルに偏りすぎた現代人の精神のバランスを保つための防波堤となっている。