テーブルやカウンターに腰を下ろしても、渡されるリストはない。初めて訪れた客は一瞬戸惑うかもしれないが、それこそが最高の一夜への入口だ。バーテンダーは客の表情、その日の気温、直前に食べたもの、あるいは抽象的な気分についての短い会話から、インスピレーションを汲み取る。
クラシックカクテルの緻密な再解釈から、旬の和素材を大胆に取り入れた実験的なアプローチまで、生み出されるグラスは二つとして同じものがない。この「自分だけのために作られた」という特別な感覚こそが、リピーターの足を途絶えさせない最大の魅力だ。