なぜ今、北海道なのか。専門家は、千島列島から南下してきた個体群が、北海道東部に定着したと分析している。背景にあるのは、近年の地球温暖化に伴う海水温の上昇や、流氷の勢力変化だ。かつては厳しい寒さと流氷に阻まれていたルートが、環境の変化によってラッコたちにとって移動しやすい「回廊」へと変貌した可能性がある。
さらに、天敵であるシャチの目を盗みやすい複雑な岩礁地帯や、コンブが生い茂る豊かな海が北海道東部には広がっている。彼らにとって、これほど安全で餌が豊富な楽園は他になかったのだろう。自然環境の変化が、皮肉にも絶滅危惧種の生息域拡大を後押ししているのだ。