かつては「動物好きの匂い」と表現されたものの正体が、ついに化学的に特定された。今年1月に発表された研究によれば、ストレスホルモンであるコルチゾールの代謝物が極限まで低い状態にある人間は、皮膚表面から微量の特定脂質化合物を放出していることが判明した。
動物の嗅覚は、人間が意識すらできない微小な生理変化を拾い上げる。怒りや焦り、あるいは「触りたい」という過剰な欲望を抱いている時、人の発汗パターンは微妙に変化する。動物にとって、その変化は「不確定なリスク」として知覚される。一方で、心身が完全に脱力し、他者への要求が存在しないニュートラルな状態にある人の匂いは、野生の勘において「風景の一部」として処理されるのだ。