1984年3月。深夜の熱狂をそのまま電波に乗せていた伝説の番組『オールナイトフジ』のスタジオは、独特の生々しい熱気に包まれていた。当時、アイドル歌手としてデビューしたばかりの17歳、松本明子。彼女はまだ、テレビという巨大な怪物のアブラカタブラを知らない純朴な少女だった。
仕掛け人は、共演していた先輩芸人たちのアドリブと冗談めかした煽りだった。「これを言ったら大物になれる」「度胸を見せろ」。若さと無知、そしてスタジオの狂乱した空気が彼女の背中を押した。マイクに向かって放たれたのは、電波に乗せることなど絶対に許されない、最も直接的で猥雑な四文字の言葉だった。言った瞬間、スタジオの空気は凍りつき、カメラは泳ぎ、スタッフの顔からは血の気が引いた。番組は即座にCMへとなだれ込み、日本のテレビ史に刻まれる「放送事故」が確定した瞬間だった。