彼女の足跡を振り返れば、日本映画界における唯一無二のポジションが鮮明になる。少女の残酷さと無垢さを同時に宿した初期の傑作『ジョゼと虎と魚たち』で見せた、車椅子のヒロイン・ジョゼの痛々しいほどの輝きは、今なお映画ファンの記憶に深く刻まれている。
さらに、底辺を生きる人間の生々しい息遣いと哀愁を体現した『そこのみにて光輝く』では、キネマ旬報ベスト・テンや日本アカデミー賞協会をはじめとする名だたる映画賞で高い評価を獲得。単なる「上手い女優」の枠を完全に超え、作品全体の空気を支配する表現者としての地位を確立した。
彼女が選ぶ作品群に通底しているのは、人間の弱さや醜さ、そしてその奥にある愛おしさを一切の誤魔化しなく描く重厚なヒューマンドラマであるという点だ。安易なエンターテインメントに逃げず、人間の本質を抉り出す作品にしか身を投じない。その孤高の矜持こそが、池脇千鶴という存在の核にある。