肝性脳症の再発防止と症状改善において、消化管内のアンモニア産生抑制と体外排出を促す内科的アプローチが治療の主軸となります。
第1選択薬として不動の地位を占めるのが、合成二糖類であるラクツロース(およびラクチトール)製剤です。ラクツロースは小腸で吸収されずに大腸に届き、腸内細菌によって分解されて有機酸を生成します。これにより腸内環境が酸性化(pH低下)し、アンモニアが吸収されにくいアンモニウムイオン(NH4+)に変換されるとともに、浸透圧作用によって排便を促進し、毒素を便とともに体外へ押し出します。便秘の悪化を防ぐため、「1日2〜3回の軟便」を目標に投与量を微調整することが臨床上の標準管理法となっています。
さらに、腸内細菌そのものによるアンモニア産生を直接抑制する難吸収性抗菌薬リファキシミンの併用や、筋肉でのアンモニア代謝を促進する分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤(アミノレバン、リーバクトなど)、カルニチン製剤の活用が確立されています。
食事療法に関するガイドラインの推奨は、過去の常識から大きく進化しています。かつては一律に厳格なタンパク質制限が行われていましたが、過度な制限は患者の筋肉量を減少させ(サルコペニアの進行)、筋肉組織が担っているアンモニア処理能力をかえって奪うという逆効果が判明しています。
現在では、十分な総エネルギーを確保した上で、植物性タンパク質(大豆製品など)を中心としたバランスの良い食事を摂取し、夜間のエネルギー枯渇と筋肉分解を防ぐ「就寝前軽食療法(LES:Late Evening Snack)」として夜間にBCAAゼリーや軽食を補給する栄養戦略が推奨されています。