医療の世界から極上の「恋愛小説」へ。渡辺作品の真髄は、大人の情愛をタブー視せず、人間の究極の救済として描き出した点にある。集英社から刊行され、ミリオンセラーを記録した『失楽園』は、単なるベストセラーの域を超えた。映画化では役所広司と黒木瞳の圧倒的な演技が話題を呼び、流行語大賞にまで上り詰めた。「失楽園する」という言葉が街中に溢れたあの狂騒を、記憶している読者も多いはずだ。
続く『愛の流刑地』でも、愛の極限としての「死」と「束縛」を描き出し、出版業界に巨大な衝撃を与えた。世俗的な道徳観を軽々と飛び越え、男女が互いの存在を溶かし合うほどの愛を問いかけた作品群。それは、冷めた現代社会に対する激しい抗議のようでもあった。