なぜ「童謡は自由に使える」という誤った言説がインターネット上で定着してしまったのでしょうか。その背景には、童謡や唱歌の歴史的成り立ちと、日本の著作権法における保護期間の法改正が複雑に絡み合っています。
日本の著作権法において、著作権の保護期間は原則として「著作者の死後70年」と定められています。かつては死後50年でしたが、2018年12月30日に発効したTPP11整備法に伴い、保護期間が20年延長されました。ここで極めて重要なのが「不遡及の原則」です。2018年末の法改正時点で、すでに旧法(死後50年)によって保護期間が満了していた作品は、期間が延長されることなくパブリックドメイン(知的財産権の消滅状態)として確定しています。具体的には、1967年12月31日以前に作詞者・作曲者が他界している楽曲については、著作権フリーとして誰でも自由に利用できます。
しかし、これが「昔の曲なら何でもフリー」という短絡的な勘違いを生む土壌となりました。童謡と呼ばれるジャンルには、明治・大正期に生まれた「尋常小学唱歌」だけでなく、昭和の高度経済成長期からNHK『みんなのうた』などで親しまれた「現代童謡」まで幅広く含まれています。作詞者や作曲者が戦後長らく活躍し、1968年以降に亡くなられている楽曲の場合、新法の死後70年ルールが適用され、2026年現在も著作権管理団体(JASRACやNexToneなど)によって厳重に権利が管理されているのが実情です。