野田弘志や森本草介をはじめとする、日本の写実絵画界を牽引する巨匠たちの代表作がここにはずらりと並ぶ。彼らの描く人物画は、今にも呼吸を始めそうだ。髪の毛の一本一本、瞳の奥に反射する微光、衣服の繊維のほつれまでが、緻密極まる筆致で描き込まれている。
しかし、近づいてルーペで覗き込むと、そこにあるのは無数の絵の具の粒子だ。何重にも塗り重ねられた油絵の具のレイヤーが、複雑な光の屈折を生み出している。画家は1日に数ミリメートルしか描き進められないこともあるという。その圧倒的な時間の集積が、キャンバスに重量感と存在感を与えているのだ。