アイナ・ジ・エンドの表現力の源泉を探るには、その波乱に満ちたキャリアを振り返る必要があります。本名は「飯谷 愛菜(いいたに あいな)」。大阪府豊中市出身で、幼少期から本格的なダンスレッスンに打ち込み、身体表現の基礎を徹底的に叩き込まれました。
高校卒業後にプロの表現者を志して上京したものの、初期の活動は決して平坦なものではありませんでした。ダンサーとしてのバックダンサー業務や、短期間活動したアイドルグループ「PARALLEL」での下積み時代、ソロシンガーとしての地道なライブハウス回りなど、思うように芽が出ない悔しさを長く味わっています。
転機となったのは2015年、WACK代表・渡辺淳之介氏によるBiSHの立ち上げオーディションでした。類まれな歌唱力とダンススキルを評価された彼女は初期メンバーとして加入。BiSHのほぼ全楽曲の振付を一手に引き受け、激しいロックサウンドと叙情的なダンスを融合させた革新的なステージングを創り上げました。
そして2026年、岩井俊二監督の音楽映画『キリエのうた』で映画初主演に抜擢。劇中歌全6曲を自ら作詞・作曲し、歌うことでしか声を出せない路上ミュージシャン「キリエ」を演じきった彼女は、第47回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、第66回ブルーリボン賞新人賞、第48回報知映画賞新人賞など名だたる映画賞を総なめにしました。この映画での熱演が、彼女を「元アイドル」という枠組みから「日本を代表する総合表現者」へと完全に押し上げたのです。