あすなろ会の永遠の決別を決定づけ、物語のトーンを決定的に暗転させたトリガーが、松岡純一郎の突然死でした。ネット上では今なお「松岡くんの死因は何だったのか」という疑問が散見されます。
松岡の公式な死因は、不慮の交通事故です。
しかし、その肉体的な死の背景には、精神的な追い詰められ方が色濃く影を落としていました。松岡は大企業の御曹司として敷かれたレールを歩むことを求められながら、自らのセクシュアリティ(掛居に対する秘めた同性愛)を仲間に打ち明けることができずにいました。当時のテレビ界において、同性愛者をキワモノではなく、知的で誠実、かつ深い苦悩を抱える一人の人間として描いた西島秀俊の演技は、極めて先進的で気品に満ちたものでした。
松岡は星香に対し、自らの秘密を受け止めてもらった代償のように一度だけ関係を持ち、星香は彼の遺児を宿すことになります。そして松岡の死によって「あすなろ会」の無邪気な共同体は文字通り粉々に砕け散り、残された4人は否応なく大人への第一歩(喪失の受け入れ)を踏み出さざるを得なくなりました。彼が残した命のバトンと死の重みこそが、登場人物全員の内省を深める決定打となった事実を見落としてはなりません。