広島護国神社とプロ野球・広島東洋カープの結びつきは極めて深く、毎シーズン開幕前に球団幹部・首脳陣・選手会がそろって必勝祈願を執り行う光景は、春の風物詩として広島のローカルニュースを大きく飾ります。球団創設期から続くこの慣例の根底には、地理的・歴史的な必然性があります。
かつて毛利輝元が築城した広島城周辺は、古くから「己斐の浦(こいのうら)」と呼ばれていたことや、城の佇まいが黒く凛々しい鯉を想起させたことから「鯉城(りじょう)」の異名を持ちます。この「鯉城」の旧本丸跡に隣接する形で再建されたのが現在の広島護国神社です。球団名「カープ(Carp=鯉)」もこの鯉城伝説と、中国の急流を登りきった鯉が龍へと変貌する「登竜門」の故事に由来しており、広島護国神社はまさにチーム発祥の精神的支柱となっています。
境内に足を踏み入れると、一際目を引くのが本殿前に鎮座する「昇鯉の像(しょうりのぞう)」と「双鯉の像(そうりのぞう)」です。昇り鯉に触れることで難関突破や出世・勝運祈願、寄り添う二匹の鯉に触れることで家内安全や夫婦円満・恋愛成就が叶うとされ、参拝者が絶え間なく祈りを捧げています。戦後、原爆によって社殿を全焼しながらも市民の手で見事に復興を遂げた不屈の歩みそのものが、逆境に立ち向かう「勝運の神」としての威厳を物語っています。