中川一郎という政治家の存在は、金権政治と派閥力学が支配していた昭和後期の自民党において、極めて特異な輝きと脆さを同時に示していました。
官僚出身でありながら一次産業を心から愛し、汗を流す国民の代弁者を自認したそのポピュリズムは、現代の政治リーダー像の先駆けでもありました。しかし、自民党内の「数とカネ」の冷酷な力学に立ち向かうには、あまりに直情径行であり、孤立を恐れない姿勢が仇となって自らを精神的袋小路へ追い込む結果となりました。
権力闘争の頂点を目指すがゆえに背負った巨大な重圧と孤独。中川一郎の非業の最期は、個人の情熱や正義感だけでは制御しきれない政治という怪物の恐ろしさを、現代を生きる私たちに生々しく伝え続けています。