日本人の心に「諸行無常」のフレーズを決定的に刻み込んだのは、鎌倉時代に成立した軍記物語『平家物語』の有名な冒頭部分です。 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」 この名文を分かりやすく現代語訳すると、次のような意味になります。
【平家物語 冒頭の現代語訳】
「祇園精舎の鐘の音には、『すべてのものは移り変わり、永遠なものはない』という響きがある。釈迦が入滅したときに白く変色したという娑羅双樹の花の色は、『勢いが盛んな者も必ず衰える』という道理を示している。栄華を極めて思い上がっている者もその栄光はずっと続くわけではなく、まるで春の夜の儚い夢のようだ。勢いが激しく勇猛な者も最後には滅びてしまい、まったく風の前に舞い散る塵(ちり)と同じである。」
平家物語における「諸行無常の響きあり」とは、どれほど権勢を誇った平家一門であっても、時代の激流と自然の摂理の前には抗えず衰退していく様を象徴しています。あわせて対比される「盛者必衰のことわり」(勢いのある者は必ず衰えるという宇宙の法則)とセットで語られることで、中世日本の無常観を象徴する代表句となりました。