お線香をあげる際、多くの人が最も混乱するのが「宗派による本数と置き方の違い」です。日本では仏教の宗派ごとに独自の儀軌(ぎき:仏事の作法規範)が発達しており、線香の本数と意味、さらには宗派別のあげ方の違いが体系化されています。
浄土真宗の線香の作法と「線香を寝かせる理由」
浄土真宗の線香の作法において、お線香を立てずに横に倒す作法は特徴的です。本願寺派では1本を2つに折り、大谷派では1本を2つまたは3つに折って、香炉のサイズに合わせて火のついた側を左に向けて置きます。
線香を寝かせる理由には、教理上の深い意味があります。浄土真宗では「他力本願」の教えに基づき、亡くなった人は即座に阿弥陀如来の力によって極楽浄土へ往生すると考えます。そのため、他宗派のように「煙に乗せて祈りを届ける」「冥界を旅する故人の食べ物(香食)とする」という発想を持ちません。線香はあくまで「阿弥陀如来の徳を讃え、清らかな香りで場を清めるためのもの」であるため、煙を高く立てる必要がなく、安全で香りが長持ちする寝線香の形式が定着したのです。
曹洞宗の線香の立て方
禅宗である曹洞宗の線香の立て方は、潔く1本を香炉の中央に真っ直ぐ立てます。複数人が参拝する場合、後からあげる人は前の人の線香の手前に重ならないよう、少し位置をずらして立てるのが細やかな気配り作法です。