天守閣には入れないものの、現在における名古屋城観光の主役は間違いなく本丸御殿です。1945年の空襲で惜しくも焼失したものの、10年に及ぶ復元工事を経て全面公開された御殿は、近世武家風俗と日本建築の極致を今に伝えています。
一歩足を踏み入れると、樹齢数百年の木曽檜(ひのき)の芳香が心地よく漂います。見学時、特に意識して鑑賞すべきポイントは以下の通りです。
- 玄関・表書院の「竹林豹虎図」:狩野派の絵師たちによって描かれた金箔貼りの障壁画。圧倒的な金地に映える虎の迫力は、訪れる他大名への威圧と格式を象徴しています。
- 上洛殿(じょうらくでん):三代将軍・徳川家光の上洛を迎えるためだけに建てられた至高の空間。贅を尽くした金具細工、極彩色の欄間(らんま)彫刻、格天井(ごうてんじょう)の蒔絵など、細部まで隙がありません。
- 湯殿書院・黒木書院:将軍専用のサウナ式蒸し風呂や、落ち着いた漆黒の空間が広がる隠れた名所です。
フラッシュ撮影は禁止されていますが、ノンフラッシュの写真撮影は許可されており、往時の将軍が目にした黄金の世界をそのままカメラに収めることができます。