現在放送されている水田わさび版ドラえもんと、1979年から2005年まで放送された大山のぶ代版(旧ドラえもん)を比較すると、作品を取り巻く演出方針や世界観の質感に明確な差異が見受けられます。現代版がデジタル作画による鮮やかな色彩とスピード感あふれるアクション、コンプライアンスに配慮した安心感を前面に打ち出しているのに対し、大山版の魅力は「生々しい生活感」と「独特の間(ま)」にありました。
当時のアニメーションは手描きのセル画で制作されており、夕暮れの空き地や散らかったのび太の部屋、昭和の木造住宅の匂いが漂うような背景美術が際立っていました。また、ドラえもん昔と今の違いとして顕著なのがキャラクター造形です。昔のドラえもんは決して完璧な保護者ではなく、のび太と一緒に悪ノリして失敗したり、時には冷酷な正論を突きつけたりと、人間味あふれる「居候の居心地の悪さや親しみ」がリアルに描かれていました。
さらに、劇伴(BGM)を手掛けた菊池俊輔による哀愁を帯びたアコースティックな音楽が、物語に深い情緒とノスタルジーを与えていた点も、旧作が今なお特別な輝きを放ち続ける大きな要因となっています。