映画『時をかける少女』の劇中に登場した風景は、半世紀近い歳月を経てどのように変化したのか。ファンの間で外せない5大スポットの現状を詳細に追います。
まず、主人公・芳山和子(原田知世)がタイムリープの混乱の中で転がり落ちそうになる象徴的な坂道が、西願寺の脇に位置する瓦坂(かわらざか)です。階段の側面に古い瓦が幾重にも埋め込まれた独特の意匠は現在もそのまま保存されており、石段を踏みしめると劇中の緊迫したストップモーションの演出が鮮やかに蘇ります。道幅は約1.5メートルと非常に狭く、生活道路として静寂が保たれています。
続いて、劇中で幾度となく印象的に登場する艮神社(うしとらじんじゃ)。境内には樹齢900年とも推定される巨大な楠(クスノキ)がそびえ立ち、千光寺山ロープウェイの直下に位置するこの場所は、尾道最古の神社としての荘厳な空気を今に伝えています。和子が深町一夫(高柳良一)と語り合った境内の空気感は、訪れる巡礼者を一瞬にして1983年のフィルムの中へと引き戻します。
深町一夫の自宅としてロケが行われた竹村家(たけむらけ)は、1878(明治11)年創業の老舗料亭旅館です。国の登録有形文化財にも指定されている格式高い数寄屋造りの建物は、現在も営業を継続しており、大林監督や映画関係者が当時滞在した記憶を今に受け継いでいます。宿泊や会席料理の利用を通じて、作品世界の深奥に浸ることができる貴重な拠点です。