日本の出版業界を特異なものにしてきたのが、「再販価格維持制度(再販制度)」と「委託販売制度」という2つの強固なシステムです。この制度が日本の高い読書水準を支えた功績は大きいものの、今日では構造改革を阻む足枷となっています。
再販価格維持制度は、出版社が定めた定価で全国どの書店でも書籍を販売することを義務づけ、価格競争を禁じる法律上の例外措置です。地方の小規模書店でも都市部と同じ価格で同一の本を販売でき、文化的な多様性を維持する役割を果たしてきました。しかし、価格を柔軟に変えてセール販売ができないため、余剰在庫の処分が難しく、結果として大量の返品を生み出す要因となっています。
一方の委託販売制度は、書店が出版社から本を「仕入れる」のではなく「預かって販売する」仕組みです。売れ残った本は一定期間内であれば取次経由で返品できます。この委託販売制度の課題は、書店側に過剰な仕入れリスクがない反面、書店が売れ筋を見極めて販売する独自のマーチャンダイジング能力を削ぎ、書店マージンが約22%と諸外国(欧米では40%前後)に比べて極端に低く抑えられてきた点にあります。
「定価販売・返品自由」というセーフティネットの上で成立していたサイクルは、市場の縮小とともに機能不全に陥り、制度疲弊の限界を迎えています。