ネット上の情報や根強い俗説には、現代の脂質代謝学に照らすと明らかに誤っている言説が少なくありません。とりわけ若い女性が陥りがちな典型的な2つの思い込みを正す必要があります。
第一の誤解は、「卵やマヨネーズを食べ過ぎたから悪玉コレステロールが上がった」という食事性コレステロール直結論です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」でも既に目標量の上限が撤廃されている通り、血液中を循環しているコレステロールの約70〜80%は肝臓で自前合成されており、食事から直接吸収される分はわずか20〜30%に過ぎません。体には恒常性(ホメオスタシス)が備わっているため、卵などのコレステロール含有食品を少し食べたからといって、健康な体内であれば肝臓側の合成量が自動調整されます。真に避けるべきは食事中のコレステロールそのものよりも、肝臓でのLDL合成を無駄に刺激する「肉の脂身や洋菓子に含まれる飽和脂肪酸の摂りすぎ」です。
第二の危険な誤解は、「20代のうちは血管が若くてしなやかだから、数値が多少高くても放置して構わない」という根拠のない楽観論です。循環器領域の研究では、高LDLコレステロールが血管壁に与えるダメージは「血中濃度 × 曝露年数(コレステロール・イヤー)」という累積量で評価されます。つまり、40代になってから急にコレステロールが上がり始めた人と、20代前半から10年以上にわたって160mg/dL以上の高値に血管を晒し続けた人とでは、30代後半から40代に突入した時点での動脈硬化の進展度が大きく異なります。自覚症状がまったくない初期段階からプラーク(血管壁のコブ)は音もなく形成されるため、若さに甘えて未受診のまま放置することは将来の脳梗塞や虚血性心疾患へのツケを前借りしている状態に他なりません。