天空闘技場で行われたクロロとヒソカ=モロウの一騎打ちは、物語における最大のターニングポイントとなった。自身の「伸縮性の愛(バンジーゴム)」と「薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)」を武器に、常に危険な死闘を楽しんできた奇術師ヒソカ。だが、入念な準備と完璧な戦術を組み上げたクロロの前に、ヒソカは観客を巻き込んだ圧倒的な群衆戦術により敗北を喫し、一時は完全に心肺停止へと追い込まれた。
しかし、この死がヒソカをモンスターへと変貌させる。「死後に強まる念」の作用により心臓マッサージを自己の念に命じていたヒソカは奇跡的な蘇生を果たし、これまでのゲーム的な戦闘観を完全に捨て去った。もはや「相手が万全の状態での決闘」を楽しむ姿勢はなく、無防備な旅団員を標的とした容赦のない狩りへと舵を切ったのだ。
シャルナークとコルトピの惨殺は、蜘蛛に対する全面戦争の宣戦布告である。ブラックホエール号の内部において、ヒソカは影に潜み、旅団の個々の隙を窺っている。狩る者と狩られる者の立場が逆転し、船内の迷宮のような密室空間で繰り広げられる心理戦は、読者に一瞬の油断も許さない緊張感を与え続けている。