事件の発端は、医療とは無関係の別件捜査だった。兵庫県警察が押収した容疑者のスマートフォン。そのフォルダに保存されていたのは、言葉を失うような動画の数々だった。患者に床を舐めさせ、車椅子から引きずり下ろし、抵抗できない人間を玩具のように弄ぶ様子が、笑い声とともに記録されていたのだ。
運営母体である医療法人社団雄仁会のもと、病棟内では日常的な暴力が完全に日常風景と化していた。通報や内部告発を阻む密室構造、新任スタッフが暴力の連鎖に引きずり込まれる歪んだ同調圧力。逮捕・起訴された元看護師らは実刑判決を受けたが、法廷で明かされた事実は氷山の一角に過ぎない。「誰も止めなかった」のではなく、「止める者が排除される」異常な力学が現場を支配していた。