冷たい蕎麦の原点となる「もりそば」の語源・由来は、江戸時代初期に登場した「ぶっかけそば」に対抗する呼び名にあります。もともと蕎麦は茹で上げた麺をつゆにつけて食べる「つけ蕎麦」が基本でした。しかし元禄期(17世紀末)、器に盛った麺に最初から熱いつゆを直接かける「ぶっかけ」がせっかちな江戸っ子の間で爆発的な流行を見せます。これと区別するため、従来の器に高く盛り付けるスタイルを「盛り蕎麦(もりそば)」と呼ぶようになりました。
一方、ざるそばの発祥は江戸時代中期の宝暦年間(1750年代)に遡ります。深川洲崎にあった蕎麦店「伊勢屋」が、他店との差別化を図るために竹ざるに蕎麦を盛って提供したのが始まりです。当時、水切れが良く見た目にも涼やかなざるそばは瞬く間に評判を呼びました。
さらに明治時代に入ると、高級感を際立たせる工夫として「ざるそばに海苔を乗せる」習慣が定着します。当時の焼き海苔は庶民にとって大変な貴重品であり、刻み海苔をふわりと乗せる演出は、特別な上位メニューであることを視覚的に誇示する決定打となったのです。