1980年、黒木瞳(本名・江上昭子)は宝塚音楽学校へ68期生として入学した。入学当初からその抜きんでた美貌と華やかな気品は周囲の目を引いていたが、特筆すべきはその後の展開の早さだ。1981年に宝塚歌劇団へ入団し、初舞台を踏んでからわずか2年目となる1982年、彼女は宝塚歌劇団月組のトップ娘役に大抜擢される。
年功序列や厳格な下積みが重んじられる伝統的な劇団の構造において、入団2年目でのトップ就任は極めて異例の事態だった。当時の劇団内やファンの間には小さくない動揺が走ったものの、彼女はプレッシャーを跳ね返すかのように舞台上で独自の輝きを放ち始める。宝塚音楽学校時代から培った基礎に加え、何より舞台上で放たれる天性の求心力が、周囲の雑音を瞬く間に称賛へと変えていった。