彼女の転落劇は、決して一個人の愚行として片付けられる問題ではない。ここには、ナイトレジャー産業が長年温存してきた「色恋営業」と「過剰な売掛システム」の構造的暴力が如実に表れている。精神的な脆さを抱えた女性客をターゲットにし、金銭感覚を麻痺させ、最終的には夜の仕事へと斡旋して回収するビジネスモデルだ。
知名度と一定の資産を持っていた坂口杏里は、歌舞伎町にとって格好の獲物だったと言わざるを得ない。華やかな肩書きを持つ彼女が店に通い、大金を落とすこと自体が店のステータスとなり、周囲の男たちはその自尊心を巧みに刺激し続けた。現在でこそ悪質ホストクラブに対する警察の取り締まりや法規制が強化されているが、彼女はそのシステムが最も野放しにされていた時代の犠牲者の一人でもあった。