団子といえば上新粉や白玉粉などの「米粉」で作るのが日本の伝統的な和菓子の常識です。しかし、大洗のみつだんごを一口頬張った観光客は、例外なく「想像していた団子とまったく違う」という衝撃を受けます。歯切れがよく、まるでパンケーキと麩(ふ)の中間のような、驚くほど柔らかく軽い口当たりが広がるためです。
この独特な食感の秘密は、主原料に100%小麦粉を使用している点にあります。水と小麦粉、少量のベーキングパウダーなどを絶妙な配合で溶いた生地を、たこ焼き器のような専用の銅板の焼き型に流し込み、竹串を刺して丸くふっくらと焼き上げます。表面を軽く焼きつつ蒸らすことで、内部に細かな気泡を抱き込んだスポンジ状の柔らかい生地が完成するのです。
焼き上がった熱々の団子には、醤油と砂糖をじっくり煮詰めて作られたトロトロの「特製みつ」が惜しみなくくぐらされ、その上からきめ細かい「きな粉」がこれでもかというほど豪快にまぶされます。甘辛いタレの塩気とみつの甘み、きな粉の香ばしさ、そして温かい生地の水分が口の中で三位一体となって溶け合う瞬間こそ、大洗みつだんごが半世紀以上にわたって人々を魅了し続ける最大の理由です。
食文化の歴史を紐解くと、茨城県央から県北にかけての地域は、古くから水田よりも畑作が盛んであり、小麦を使った郷土料理(手打ちうどんやすいとんなど)が庶民の生活に深く根付いていました。米が貴重だった昭和初期から戦後にかけて、子どもたちに安価でお腹いっぱいのおやつを提供しようとした駄菓子屋の知恵が、この「小麦粉のみつだんご」を生み出したと言われています。