古代ギリシャおよび西洋思想では、人間の抱く愛情を複数の概念に細分化して捉えてきました。代表的なものが「愛の4形態」です。
1. エロス(Eros):情熱的な愛・求める愛
価値ある対象や美に惹かれ、それを自己のものにしたいと願う求心的な愛。自己の欠乏を埋める動機を含むため、本質的に条件付きの性格を持ちます。
2. アガペー(Agape):無償の愛・神の愛
新約聖書を中心とするキリスト教神学で強調される愛。対象が美しいか醜いか、価値があるか否かを問わず、無条件にすべてを肯定して注がれる利他的・自己犠牲的な愛です。
3. フィリア(Philia):友愛・精神的連帯
アリストテレスが重んじた、互いの人格への敬意や共通の目的に基づく対等な友情。相互理解と信頼関係の上に成り立ちます。
4. ストルゲー(Storge):家族愛・自然な愛着
親が子を慈しむような、血縁や長い時間を共にした身近な間柄で自然発生する穏やかな情愛。
神学者アンダシュ・ニューグレンの古典的名著『エロースとアガペー』が示したように、エロスが「人間が自らの不完全さを埋めるために上へと登ろうとする上昇の愛」であるのに対し、アガペーは「神が罪深い人間へ一方的に恵みをもたらす下降の愛」です。両者の性質の違いを理解することは、西洋の倫理観や人間理解を読み解く上で欠かせない視点となります。