事件から10年が経った2026年、日本政府が進めてきた「働き方改革」は一定の成果を見せているかのように思える。残業時間の上限規制が導入され、多くの企業で「ノー残業デー」やリモートワークが推奨されるようになった。しかし、現場の実態はどうだろうか。業務量そのものが減っていないにもかかわらず、単に「PCのログ強制シャットダウン」などの対策をとることで、隠れ残業や持ち帰り仕事が常態化しているケースは後を絶たない。
形だけの制度改革は、かえって労働者を孤立させる。自宅でのリモートワーク中に深夜まで業務に追われる若手社員の姿は、10年前の電通のオフィスで深夜まで明かりが灯っていた光景と本質的に何も変わっていない。システムが変わっても、組織の「空気」や「評価基準」が変わらなければ、第二、第三の悲劇を防ぐことはできないのだ。