映画ファンを唸らせる最大の要素は、ジャンルとしての先鋭さにある。本作は単なるエンターテインメントの枠を超えた、息もつかせぬサスペンスアクションでありながら、胸を抉るような重厚なヒューマンドラマの側面を兼ね備えている。劇中で描かれる過酷な運命と、極限状態で試される人間関係。山下敦弘監督が得意とするリアルな人間描写が、激しいアクションシーンと融合することで、独特の没入感を生み出している。
現場スタッフによれば、撮影現場での北川玲斗の集中力は鬼気迫るものがあったという。吹き替えなしで挑んだ肉体的なアクションシーンはもちろんのこと、一切のセリフを排した視線だけの演技において、彼は圧倒的な存在感を発揮した。観客の予想を何度も裏切る展開の中で、男が背負う過去と葛藤が苛烈に描かれていく。