これほど苦しい役なら、なぜもっと早く辞めなかったのか。そこには松重豊という役者の、奇妙なまでの誠実さがある。彼はもともと、この企画が持ち上がった当初「誰がこんなおっさんの食事を見るんだ」と半信半疑だった。しかし、蓋を開けてみれば社会現象に。視聴者の熱狂的な支持が、彼を「辞める」という選択肢から遠ざけ続けた。
スタッフへの信頼感も大きい。長年苦楽を共にした制作陣との絆が、彼の重い腰を上げさせ、再び箸を持たせる原動力になってきた。嫌よ嫌よも好きのうち、という単純な話ではない。そこには、プロとしての強烈な責任感が横たわっている。