ここで多くの人が抱く疑問が、「中国国内でプーさんが完全に抹殺されたのか」という点です。その答えは、2016年に開園した上海ディズニーランドの現場を見れば明確に分かります。
パーク内には現在も「プーさんの冒険(The Many Adventures of Winnie the Pooh)」というアトラクションが通常通り稼働しており、ショップにはプーさんのぬいぐるみやグッズが所狭しと並んでいます。着ぐるみによるキャラクターグリーティングも実施されており、パーク内でプーさんに出会うこと自体は何の制限もありません。
この一見矛盾した対応の裏には、当局の極めてプラグマティックな計算が存在します。
- 政治的風刺・言論空間:指導者の権威を損なう恐れがあるため徹底的に検閲・排除する
- 商業的・観光的空間:莫大な経済効果とディズニーとの関係維持のため、無害なキャラクタービジネスとして容認する
つまり、「政治的な文脈を帯びない純粋な商業利用」である限り、プーさんの存在自体が消去されているわけではありません。しかし、来園者がプーさんのぬいぐるみを使って習近平氏を揶揄するような写真を撮影し、それをSNSにアップロードした瞬間に検閲の網が発動するという、危ういバランスの上に成り立っています。