時計の針を少し戻そう。ブラジルW杯を控えた時期、本田の首元に突然現れた横一直線の傷跡に、日本中のメディアとファンが騒然となった。眼球の突出や、急激な体型の変化。ピッチ上でのパフォーマンス低下を指摘する声も少なくなかったが、本田自身は沈黙を守り続けた。言い訳を嫌う彼らしい姿勢だったが、その裏には壮絶な体調管理の苦闘があったはずだ。
当時、イタリアの名門ACミランで10番を背負っていた本田。世界最高峰のプレッシャーと、自身の体が思うように動かないもどかしさ。その二重苦の中で、彼はただ黙々とボールを追い続けた。あの傷跡こそが、彼が文字通り命を削って戦っていた証拠だったのだ。