プライドの高いトムが、なぜここまでプライドをかなぐり捨てておむつ姿の赤ちゃん役に甘んじていたのか。その最大の理由は、女の子から約束された「ご褒美のごちそう(魚)」にありました。
女の子はトムに「お利口にして赤ちゃんごっこに付き合ったら、後で美味しいお魚をあげるわね」と言い含めていました。普段はジェリーとの果てしない追いかけっこで飢えているトムにとって、労せずして手に入る極上の魚は何物にも代えがたいインセンティブだったのです。ジェリーにどれだけ嘲笑されようと、トムは「魚のためだ、我慢我慢……」と自分に言い聞かせて必死に耐え忍んでいました。
しかし、その打算的な我慢が裏目に出て、悪友たちに情けない姿を晒すという最大の悲劇を招くことになります。欲に目がくらんで自ら罠にはまり、最終的に何倍ものしっぺ返しを食らうという、トムの人間味(猫味)あふれるキャラクター造形が実に見事に描かれています。