エホバの証人を語る上で最も社会的議論を呼んできた要素の一つが、「輸血拒否」の教条です。成人のみならず未成年の信者に対しても輸血を避けるよう徹底した指導が行われてきました。
教団が輸血を拒む根本的な理由は、新約聖書の『使徒の働き』15章29節にある「偶像に犠牲として捧げられた物と、血と、絞殺されたものと、淫行を避け続けなさい」といった記述にあります。彼らは血を「生命そのもの」とみなし、他者の血を体内に取り込む行為を神への重大な背信行為と解釈しているためです。
そのため信者は、輸血を伴わない「無輸血手術」や代替治療を強く要求し、緊急時に医療機関が輸血を行おうとした際に激しい対立が生じるケースが後を絶ちませんでした。
近年では「輸血拒否合意文書」の有効性や、未成年者の自己決定権の限界をめぐり、日本輸血・細胞治療学会をはじめとする合同委員会が作成した『宗教的輸血拒否に関する合同輸血療法委員会のガイドライン』に沿った医療対応が標準化されつつあります。生命の危険が迫る15歳未満の小児に対しては、親権者が拒絶しても救命のための輸血を行う「絶対的無輸血」の拒絶方針が医療現場に定着しています。