平和祈念像の顔立ちをじっくり観察すると、穏やかでありながらどこか異国情緒を漂わせる不思議な造形であることに気付きます。切れ長の目蓋(まぶた)はうっすらと閉じられており、これは原爆犠牲者の冥福を祈る慈悲の表情です。
作者の北村西望は、この顔立ちについて「東洋の仏教的な慈悲」と「西洋のキリスト教的な神の愛」を融合させたと語り残しています。長崎は古くから南蛮貿易やキリシタン文化が根付き、原爆によって多くの信徒が集う浦上天主堂も壊滅的な被害を受けました。宗教や人種、国境という枠組みをすべて超越し、全人類が等しく共有できる「究極の慈愛」を形にするため、あえて東洋人とも西洋人ともつかない普遍的な聖人の顔が追求されたのです。