人魚という存在が持つ強烈な集客力に目をつけ、世界的な詐欺商法へと仕立て上げた人物がいる。19世紀アメリカの興行師P・T・バーナムだ。彼がニューヨークの博物館で公開した「フィジー人魚(Feejee Mermaid)」は、全米に大フィーバーを巻き起こした。
日本から買い付けられたとされるその正体は、幼子のサルと魚をつなぎ合わせたグロテスクな乾燥標本に過ぎなかった。しかし、周到な宣伝工作と新聞を利用した情報操作によって、群衆はまんまとそのペテンに酔いしれた。科学的言説が普及し始めた時代でさえ、人々は「怪異」を欲望していた証左といえる。