家庭人としての四代目段四郎は、二人の息子たちの動向にも深く関わっていた。実務と芸を継承した四代目 市川猿之助、そして後に歌舞伎の世界へと飛び込んだ俳優の香川照之(九代目市川中車)である。
複雑な家庭環境の中で育った二人の息子たちが、それぞれ異なる道から歌舞伎の舞台へと集うプロセスには、肉親ならではの深い葛藤と絆が存在した。父として、そして大先輩の役者として、彼は息子たちの成長を静かに見守り続けていた。
香川照之が歌舞伎界入りを決意した際も、澤瀉屋の血脈と伝統を未来へ繋ぐという大きな意志が背景にあった。息子たちが魅せるエネルギーの源流には、常に父・段四郎が守り抜いてきた芸の基本が存在していたのである。